イタリア料理にスパイスは使われてなかった?
今回はサフランについてです。
サフランを使ったイタリア料理には、ミラノ風リゾットやボローニャ周辺のサフラン入り手打ちパスタなどが有名です。
下の写真は、サフラン入りの細麺パスタ、タリオリーニのトリュフ風味。
下町の食堂での一コマです。それくらいサフランは、今では一般的
でも、イタリア料理は、大昔からハーブがよく使われていました。
バジルにローズマリー、セージなどなど、兎料理にはラベンダーを使ったり、イタリアのお料理はハーブのお料理と言えるかも知れませんよね。
それだけあれば、風味付けは十分なはず。それにサフランは、元々高価です。
では、なんでイタリア料理にサフランが使われ出したのか?
見聞きしたことから書いてみました。
イタリア料理のスパイスと地理や歴史
そのサフランを作るのは、とても大変。
秋に咲く紫色の花から、真紅の雌しべを丁寧に取り外した後、ふるいの上に載せ暖炉の傍らで乾燥させます。
それに、1kgのサフランを生産するのに20万本の花が必要となるらしいので、高価なのも納得できます。
写真は、私のシチリアの取引先のニコロさんから貰ったサフラン栽培の様子なのですが、こんな細かい作業なんです。
そのサフランは、中東から伝わってきました。
下の絵地図の真ん中あたりに「ラクイラ」という地名があります。
そこの南東に「ナヴェッリ平原」という場所があるのですが、イタリアにおけるサフラン栽培の発祥地だったようです。
その「ナヴェッリ平原」は、ローマ方面から中東へ行く通り道だったらしく、ナヴェッリ平原の修道士達が、収入源として14世紀頃から栽培を始めたみたいです。
そのためか、このナヴェッリ平原周辺には、特産のサフランを使用したレシピがありません。
売り物を食べちゃうわけにはいきませんからね。
そのナヴェッリ平原から右側の海、アドリア海の大きな港町ペスカーラあたりに行くと、サフランを使ったレシピが出てきます。
サフラン入りのパスタ「キターラ」を使ったボンゴレなどは絶品で、気の利いたお店ではお願いすると、お皿の上でサフランを砕いて加えてくれます。懐かしい。
サフラン入りのレシピは、そこからアドリア海沿いに北上し、先ほどご紹介したボローニャ周辺の手打ちパスタや、更に北のミラノへと続くのですが、ローマやフィレンツェの大昔からあるレシピにサフランは登場しません。
その理由が、下の地図に出ています。
Hans BraxmeierによるPixabayからの画像
イタリア半島には、真ん中に高い山脈があって、その山を越えずにサフランレシピが広まっていったんでは無いかなと思っています。
もう一度先ほどの地図に戻ります。
フィレンツェとボローニャって、もの凄く近いですよね。今は電車で40分くらいの距離です。
でも、このフィレンツェとボローニャの間にトンネルが開通したのは、ムッソリーニの時代です。
まだ僅か80年くらいなんです。
トンネルが開通する前、フィレンツェからボローニャへ行くには、山脈を避けるようにピサ方面へ向かって、一度海に出なければなりませんでした。
絵地図のピサとジェノバの間に、ラ・スペツィア(La Spezia)という町があるのですが、ここは胡椒に縁深い土地です。
地名がスパイスの語源になっているほど
spezie(イタリア語)spices(英語)
その胡椒については、次回ご案内させていただきます。