飲めるオリーブオイルについて

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私が「飲めるエクストラバージンオリーブオイル」とお勧めしている品のことを少々。
普通オリーブオイルを飲む機会は、なかなか無いですよね。今から20年くらい前になりますが、最初の渡伊前テレビでイタリア紀行番組をよく見ていました。その中でお爺さんがショットグラスでオリーブオイルを飲んでいたのを目にした記憶があります。「この人油飲んでるけど美味いのかな」と思って当時手に入ったオリーブオイルを飲んでみると、これが酷いことに。味覚の違いから、彼らは飲めるけど日本人には無理。というのが当時の私の結論でした。

しかし、実際にイタリアに行き、オリーブオイルの生産元を訪れて試してみると全くの別物。サラッとしていて辛みはあるものの、後味のしつこさも無く美味しい。とても驚いた記憶があります。

そのような経緯もあり、私は店頭販売の祭、オリーブオイルの美味しさを味わっていただくために飲んでみる事をお勧めしております。先日お邪魔した北の住まい設計社様の東川での夏至祭、札幌での試食会でも、かなり沢山の方に試していただき、とても会話が弾みました。

そもそもオリーブオイル、この場合はエクストラバージンのオリーブオイルですが、その製法から考えてみるとオリーブの実のジュースです。飲んでも油っぽかったりしてはいけないのです。

とは言えども、お客様は、オリーブオイルを飲むのは、ほとんどは初めての経験。
できるだけ軽いものからお勧めしています。

絞りたてのエクストラバージンオリーブオイル。絞りたてはポリフェノールがたっぷりなので辛いですよ(笑)

絞りたてのエクストラバージンオリーブオイル。絞りたてはポリフェノールたっぷりで辛いです(笑)

まず鮮度
オリーブオイルは、熱や光で劣化します。完全に劣化した物は、飲めたものではありません。鮮度に関しての詳しいレポートは、こちらの記事をご参照ください。
完全に劣化していなくとも物流で扱いが悪かったり、賞味期限が迫っていたりすると、オリーブオイルの軽快さは失われていて、なんとかなく重い後味になってしまいます。その事もあり、私は少量を高頻度で輸入しています。ほとんどの品は製造元から出荷されて3ヶ月以内の品です。全ての物流過程を把握していますし、温度管理も気をつけていますので自信を持ってお勧めできます。

次にオリーブの品種
オリーブオイルの味は、非常にバリエーションが豊かです。辛かったり苦かったり。
この味の違いは、収穫地域の伝統的な料理と密接に関わっています。地域で手に入るものを美味しく食べるために長い年月をかけて作り上げてきました。地元で手に入る食材を美味しく食べるために努力するというのは、古今東西同じです。日本もそうですよね。
私は、生産地域の食文化が魚介類が中心でマイルドな味わいのタジャスカ種のオリーブオイルを最初の試飲用にお勧めしています。
具体的には、以下の2品です。

エクストラ・バージン・オリーブオイル BIOLOGICA
エクストラ・バージン・オリーブオイル「ヴァッリ・デッラ・タジャスカ」

さて、味について。ここからうんちくてんこ盛りです。すみません。

ご案内したとおり、オリーブオイルの味は、産地地域の食生活を密接に関係してきます。魚介類が中心の地域は、それにあうようにマイルドに。タジャスカ種のオリーブオイルの産地は、北イタリアリグーリア州の沿岸地域で魚介類が中心の食文化です。一方、内陸部で肉食文化が中心の地域では、しっかりとした味わいのものが好まれます。私が勤めていたトスカーナ地方は、まさにこれにあたります。この地方は、肉、野菜、豆が主食でオリーブオイルと塩、ハーブで料理します。これらのレシピには、レッチーノやフラントイオ種のオリーブを主材料にしたカミリアーノ社のモンタルチーノ産のエクストラバージンが最高の相性です。

さて、魚介類が中心でも地域差があります。それは歴史的な背景から生じているようです。

例えば、シチリア

同じ魚介類が中心でもタジャスカ種のオリーブオイルとは味わいが違い、シチリアのは、もっと青く濃いものが多くあります。
何故か。これは私が聞いた話からの想像ですが、昔シチリアの一般市民は、新鮮な魚介類を食する機会が少なかったようです。
例えばイワシについて。冷蔵保存が出来なかった昔、朝市場に並んでから時間経過と共に段々安くなったようです。とても暑い島ですので、だんだん鮮度が落ちていきます。一般庶民は、その安くなったタイミングを見計らって買ったらしいです。

そうなると、やはり多少味の濃いオリーブオイルが必要になってきます。
また、この少し時間の経ったイワシを美味しく食べるレシピとして、フェンネルを沢山使ったパスタコンサルデというレシピも伝統料理の中にあります。

リグーリア州は、一般庶民でも新鮮な魚介類を手に入れる事ができたので比較的マイルドなオリーブオイルを好んだのだと思います。ただデリケートな故に管理に気をつけなければなりません。
イタリア国内でも、産地から離れた所で手にするタジャスカ種のオリーブオイルは、美味しくなかったりします。

話を味に戻しましょう。
味わいは、同じオリーブの品種を使用しても色々調整することが可能です。木の剪定などの栽培手法よりも顕著に表れるのは、収穫時期と搾油方法です。

搾油方法に関しては、かなり難しい話です。そもそもどうやればどういう味になるかは、それぞれの生産者の企業秘密のようです。私が知っている生産者は、搾油はオーナー一家しか行いません。私の勉強不足もありご説明できません。申し訳ありません。

もっと分かり易いのが収穫時期の違いから生じる味の違いです。
早く収穫すれば、辛み苦みが強くその変わり搾油量は少なく。完熟まで待てばマイルドになり搾油量も増えますが、辛み苦みに表される抗酸化物質が少なくなるので、デリケートな品になります。私が飲めるオリーブオイルとしてお勧めするタジャスカ種のオリーブオイルは、完熟タイプの物です。

タジャスカ種の収穫の様子。木を棒で揺すって完熟したものを落として搾油します。

タジャスカ種の収穫の様子。木を棒で揺すって完熟したものを落として搾油します。

タジャスカ種のオリーブについて、もう少し
タジャスカ種の産地は北イタリアのリグーリア州。フランスとの国境近く沿岸沿いに広がる州の西側が名産地です。このタジャスカという名前ですが、言い伝えでは、大昔タジャと言う人が地域の人達にオリーブ栽培を教えたことが由来しているとか。事実、taggia(タジャ)という地名がこの州にはあります。※見てきました。確かにありました(笑)このタジャスカというオリーブは、この地にしか生えないらしいです。また、オリーブの木は、違う品種が入ってくるとケンカをするそうで、新参者を枯らします。私の取引先も搾油量が多く比較的栽培しやすい、フラントイオやレッチーノをタジャスカ畑の近くに植えたのですが、見事に枯れました。

1本の木から色々な色の実が出来るのもタジャスカ種オリーブの特徴です。

1本の木から色々な色の実が出来るのもタジャスカ種オリーブの特徴です。

一見、かなり気の強そうなタジャスカオリーブですが、日本人の好みに合うからか、タジャスカ種のオリーブオイルは、非常に多く入ってきています。
収穫時期は、毎年11月から始まって、完熟した実を順番に搾って、2月頃まで続きます。1本の木で五月雨式に熟すのと、色々な色の実が付くのがタジャスカ種の特徴です。完熟まで待つので、フルーティですがデリケート。お話したとおりイタリア国内でも鮮度の良いタジャスカ種のオリーブオイルを手に入れるのは簡単ではありません。私の品は、製造元から空輸してきた品です。ぜひお試しください。

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ヒナタノ店主・加藤 昭広

おいしいもので喜んでいただくことが大好きです。おいしいものを探してイタリアへ移住。気がついたら仕事になっていました。
自他ともに認めるオリーブオイル ヲタクです。
このブログでは、おいしい話しやイタリアの職人さんたちから聞いた小ネタを紹介しています。