この仕事を始める前には、50種類くらいのオリーブオイルを味見しました。1番後ろにあるペットボトル入りは、知り合いの家の自家製。イタリアの食卓には、いつもオリーブオイルがあります。日本の味噌や醤油のようでした。
食料品店に行くと実に沢山のオリーブオイルがあります。値段も安価なものから高価なものまで様々。「高いものの方が美味しいだろうと思って買ってみると意外に美味しくない」こんな経験をお持ちの方が沢山いらっしゃると思います。私だったらエクストラバージンオリーブオイルをどう選ぶかをご紹介します。ご参考にしていただければ幸いです。
まず簡単に製造方法を
エクストラバージンオリーブオイルの製造方法
収穫
収穫期は、地域やオリーブの種類によりますが、概ね10月から翌年2月。
収穫方法も異なり、木に登って小さな熊手で収穫したり木を揺すったり色々です。粉砕
オリーブの実を砕いてミル状にする作業です。収穫後オリーブの実は、
すぐに酸化が始まりますので24時間以内に作業をするのが一般的です。搾油
「2」の作業と共に温度が上がらないように細心の注意が計られます。自然沈殿(澱引き)
いわゆるデキャンティング。この自然沈殿の後すぐに瓶詰めする生産者もいます。フィルターをかけて濾過
いわゆるデキャンティング。この自然沈殿の後すぐに瓶詰めする生産者もいます。瓶詰め
以上を踏まえて
まず購入候補から外すのは、透明ボトル。特に無濾過の透明ボトルは絶対買いません。
前回ご案内したとおり、オリーブオイルは、光に弱くて未開封でもオリーブオイルに含まれる葉緑素が、光により分解されて劣化します。時折250mlや500mlの透明ボトルのエクストラバージンオリーブオイルを目にしますが私は買いません。特に濁り成分のある無濾過のオリーブオイルは、状態が非常に悪いと予想されます。オリーブオイルの濁り成分は、非常に痛みやすくデリケートですので光に長時間さらすというのは論外です。確かに透明ボトルのオリーブオイルはイタリア現地でも見かけます。美味しいものもありますが、生産から購入者の使い切りまでの時間などの使用環境が全然違います。
特にデリケートなのが、絞りたてをデキャンティングせずに瓶詰めする新物のノベッロ(Novello)のオリーブオイル。私も時折仕入れますが、これは遮光ボトルに入っていたとしても最長6ヶ月。私は3ヶ月以内の使い切りをお勧めしています。
濾過したオリーブオイルと無濾過は、どちらが美味しいか
よくお客様から「無濾過と濾過した(フィルターをかけた)オリーブオイルは、どちらが美味しいのか」とご質問をいただきます。これは、どちらが美味しいとも言えません。両方のタイプを作っている生産者を何社か知っているのですが、濾過したオリーブオイルの方が美味しい場合もありますし、その逆もあります。どちらが美味しいかは、生産者の作り方次第です。
適正な価格帯は?
これも前回ご案内したお話しですが、イタリアのオリーブオイル生産者組合の方から聞いた話から勘案するとリッターあたり定価で3,000円を切っているエクストラバージンオリーブオイルはイタリア産ではない可能性があります。
※前回の記事では、誤って売価と書いてしまいました。訂正させていただきます。申し訳ありません。
※前回の記事では、誤って売価と書いてしまいました。訂正させていただきます。申し訳ありません。
確かにイタリアには農園を持たずにオリーブオイルを買ってきて、ブレンドと瓶詰めだけを行っている会社があり、驚くような値段を提示して来ることがありますので、色々努力してコストを抑えた結果なのかも知れません。それに私は大規模な商業の世界は知識不足ですので、軽はずみなことを言うのは控えた方が良いかも知れません。
しかし、オリーブオイル生産者が口を揃えて言うのは、EUになってから域内のトレーサビリティーが取れなくなり、物価の安い他の国からのオリーブオイルによってイタリアのオリーブオイル生産者は、価格で苦労している事です。「木の数が増えてないのに出荷数が凄く増えた」などの噂話を時折耳にします。イタリア産が絶対良いとは言いませんが、産地の分からない食品に私は不安を覚えます。
オリーブオイルの価格について、これは人件費などの原価の積み上げ、実からの搾油率、実の出来不出来、産地のブランド力や、その地域の物価水準など、実に様々な要素によって決まってきます。私はオリーブオイルのボトルで産地を見て相場観なんとなく分かるのですが、これを一度でご説明するのは、無理ですので追々ご案内していきたいと思います。
ここでは、高価なオリーブオイルの代表トスカーナ州産のオリーブオイルについて。今から20年以上前の話ですが、トスカーナ州産のワイン、キャンティやブルネッロが有名になり、イギリス人やドイツ人がキャンティエリアの別荘地を買い始めてから、域内の物価が高くなりました。その流れかトスカーナ州産のオリーブオイルは全体的に高価。今の相場でしたらリッターあたり7~8,000円するのは当たり前です。
最後に賞味期限
イタリアの法律では、オリーブオイルの賞味期限は、製造から18ヶ月。ほとんどの生産者は、瓶詰めから18ヶ月で賞味期限を設定します。中には、私が取り扱うブルーナ家の人のように「製造とは搾油の事である」と搾油から18ヶ月で設定する人もいますが(笑)。
余談ですが、 ブルーナ家の品 は、瓶詰め後すぐに空輸で届いても残りの賞味期限が10ヶ月という時があります。売り手としては、少々困るのですが彼らの意思を尊重したいですし、この頑なな態度が、お客様にお勧めする自信になっております。
話を賞味期限に戻しましょう。以前ご紹介したレポートにもある通り15℃の冷暗所で管理すれば、最長36ヶ月間エクストラバージンと呼べる品質を維持できます。生産者は、低温の環境下にステンレスタンクでオリーブオイルを保管しているので、瓶詰めを製造日と解釈しても品質的には問題ないと思います。
そこから劣化が始まるのですが、オリーブオイルの品質を保つポリフェノールなどの抗酸化物質は、時間経過と共に減少していきます。つまり残りの賞味期限が短いほど抗酸化物質が少ないことが予想されます。物流や保存状態にもよりますが、私だったら出来れば一年くらい、最低でも6ヶ月以上賞味期限が残っている品を選びます。
次回は、ボトルで産地を見る方法などご案内する予定です。
ご覧いただきありがとうございました。
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株式会社 il Bianco 加藤