オリーブオイルを料理にかけると美味しくなる?
エキストラバージンオリーブオイル(以下オリーブオイルと省略させていただきます)をお料理にかけてみたことはありますか?テレビCMやお料理番組でも、お料理の仕上げにオリーブオイルをたっぷりかけているのをよく見ます。
オリーブオイルは、かけると色々なお料理をひと味もふた味も美味しくする魔法のような調味料です。
もし、オリーブオイルを料理にかけて美味しく無かった場合は、きっとオリーブオイルそのものが悪かったか、お料理とオリーブオイルの相性に問題があったのだと思います。では、高級なオリーブオイルにすれば良いかと言いますと、そうでも無かったりします。お料理にかけるオリーブオイル選びには大事なポイントもあります。
オリーブオイルをお料理にかける理由
まず最初に、何でオリーブオイルをお料理にかけるかですが、イタリアの人はみな「美味しくなるから」だと言いますし、私もそう思います。出来たお料理にオリーブオイルをかけると、美味しい香りがフワッと立ち上り、美味しさが倍増。時には、ちょっと失敗したお料理の味もごまかせてしまう。オリーブオイルは優れものの調味料ですよね。
日本人の感覚では、いくらオリーブオイルでも油なんかお料理にかけて美味しくなるの?と思われるかも知れませんが、イタリアでは、普通の家庭でもずっと昔から、お料理の仕上げにオリーブオイルをかけることをしています。それは、本物のオリーブオイルは、飲めるくらい軽くて美味しので、日本で使われてきた食油油とは別物ということもあるかも知れません。
イタリア料理って、バターや生クリームを使用していたり結構重そうなイメージがあるかも知れませんけど、オリーブオイルを料理の中心にしている地方のお料理は、ビックリするぐらいあっさりしています。お魚やお肉を塩焼きしただけだったり、付け合わせのホウレン草は茹でただけだったり。こんなレシピが多いのです。
これだけだとあっさり過ぎてうま味が足りないので、オリーブオイルを仕上げに使っています。脂質って美味しく感じることがありますよね。パスタ料理なども仕上げのオリーブオイルをかけるとかけないのとでは、食べ応えも美味しさも全然違います。
余談ですけど、イタリアでも脂質の多いバターや生クリームをたくさん使うお料理の仕上げには、オリーブオイルをかけたりしません。
こういう乳製品をたくさん使うレシピは、ミラノより北の北イタリアに多いのですけど、大昔からこの地域はオリーブオイルの生産量が少ないので、伝統的なレシピにオリーブオイルは使いませんし、オリーブオイルをかけなくても食べ応えがあるお料理が多いです。
オリーブオイルかけなくてもズッシリのお料理
オリーブオイルをかけなくても食べ応えのあるお料理の例として、例えば、溶かしバターで揚げたカツ。砂肝と赤ワインで仕上げたリゾット、仕上げにバターとチーズたっぷり。こんな感じですので、さすがにオリーブオイルをお料理にかけません(笑)近年は健康のために、北イタリアでも、お料理の脂質を乳製品からオリーブオイルに置き換えようとしていました。
北イタリアの高速道路SAでのお昼ご飯。ソーセージにバターたっぷりのポレンタ。このお料理にはオリーブオイルをかけません(笑)ちなみに、これは1人分のメインディッシュで、これにパスタとサラダが付きました。
オリーブオイルをかけて料理をおいしくするコツ
かけるとお料理が楽しく美味しくなるオリーブオイルですが、何にでも合うかと言うと、そうではないと思います。
オリーブオイルをかけることで美味しく食べられるお料理選びのポイントですが、オリーブオイルにも香りがありますので、和食だったら香りを楽しむお料理には合いにくいと思います。例えば、お吸い物などですね。和食でも結構しっかりした味のお料理にはオリーブオイルをかけても美味しいものがあります。例えば納豆などとは良い相性です。
これら、オリーブオイルを料理にかけて美味しくするコツですが、大事なのはオリーブオイル選びだと思います。絶対の条件は、熱の加わっていないエキストラバージンオリーブオイルであること。どんな油脂類も熱が加われば油っぽくなります。例えば、ピュアオリーブオイルなどは、製造工程で熱が加わっているので、味も完全に油です。
エキストラバージンオリーブオイルが美味しくて体に良いのは、オリーブの収穫から瓶詰めまで熱が加わっていないからです。エキストラバージンオリーブオイルは、収穫してすぐにオリーブの実を30度以下の温度でゆっくり搾ります。この温度以上で搾ると、どうしても味が油っぽくなってしまいます。
かけると料理がおいしくなるオリーブオイルとは
もし、お料理にオリーブオイルをかけて、「うゎ、あぶらっぽい!」となったり、お料理の後味に油っぽさが残るようでしたら、それは使われたオリーブオイル自体が悪いと思います。でも、致し方無い事だと思います。オリーブオイルをお料理にかけることや、健康のためにオリーブオイルを飲むことなど、オリーブオイルの本場での使い方はメディアなどで情報がたくさん出てきていますが、日本には本場と同じ品質のオリーブオイルがほとんど無いのです。
オリーブオイルは、熱や光で劣化(酸化)してしまいます。以前、健康のために飲んで良いオリーブオイルの記事でもご案内しましたが、日本で売られているほとんどのオリーブオイルは、エキストラバージンオリーブオイルの国際基準酸度0.8%以下を満たしていないと思います。コンテナ内が50℃にもなってしまうコンテナ船で運ばれてきたり、光で酸化するのに透明の瓶に入っているオリーブオイルが売られてもいます。
こちらに詳しくご案内しています
光がオリーブオイルを酸化、劣化させる理由
オリーブオイルが熱によって劣化する 遊離脂肪酸編
「そんなインチキオリーブオイルだらけとは思えない。」と思われるかも知れませんが、日本ではエキストラバージンオリーブオイルの法的な基準が無く、ピュアオリーブオイルなどの精製されたオリーブオイルと一緒に「食用オリーブ油」と言うひとつのカテゴリーにまとめられています。この食用オリーブ油というのは、原材料がオリーブと言うことと、酸度は2%以下というのが基準です。酸度2%のオリーブオイルは、かなり油っぽいと思います。
飲んでも良いくらいの品質のオリーブオイルとは、どのようなオリーブオイルかをご案内した記事です。
オリーブオイルを料理にかける失敗例
美味しくなると思ってオリーブオイルをお料理の仕上げにかけて失敗してしまう例ですが、だいたい以下のような感じではないですか?
1.オリーブオイルをお料理にかけてみたけど、特に美味しくなることは無くて、なんだか油っぽくなってしまった。
2.肉料理用の辛味苦味など味が強いオリーブオイルを、鮮魚のカルパッチョなどの魚介類料理や、モッツァレラチーズとトマトのカプレーゼに使ってしまったので、お料理が美味しくない。
1.については、先ほどご案内したとおり、オリーブオイルの鮮度や品質がいけなかったのだと思います。
2.についてですが、オリーブオイルにも味が色々あります。これが難しいですよね。見分け方が分かりにくい。
イタリアで、オリーブオイルを料理にかける理由として、そのオリーブオイルが採れる地域のご飯をおいしく食べるのが目的とご案内しました。ということは、魚を食べる地域は魚料理用にマイルドな味のオリーブオイル、お肉ばっかり食べる地域は、辛味苦味があるスパイシーなオリーブオイルが好まれます。
そのようなお料理にかけるように、肉食文化がある産地では、オリーブの収穫時期を早くして辛くしたり、苦みがオリーブオイルの味に出るようにします。私はオリーブオイルを仕事にしていますので、ボトルやラベルの雰囲気を見てラベルの住所を読めば、だいたいこんな味のオリーブオイルだな。と分かるのですが、なかなか難しいと思います。
参考までにラベルでオリーブオイルの産地を見極める方法を以前ご紹介しましたので、ご案内させていただきます。
もし、お手元にあるオリーブオイルが、お料理にかけたら苦かったり辛かったりしてしまうオリーブオイルでも対処方法はあります。暖かいお料理の仕上げにかけたら辛味苦味はある程度飛びますが、カルパッチョやカプレーゼには厳しいです。やはり肉料理にあうオリーブオイルは、味が強い間は魚介類のお料理には使いにくいです。でも、苦味や辛味は時間経過と共に減っていきますので、味が落ち着けばお肉用と言われているオリーブオイルも使えるかも知れません。しかし、味が落ち着くまでには、オリーブオイルの種類によっては、年単位で時間がかかってしまうのが難点です。
以前の記事です。苦すぎるオリーブオイルの使い方や対処方法をご案内します
オリーブオイルをお料理にかけることでおいしくする方法、話が込み入ってきてしまいました。
なんだか面倒くさくなられたかも知れませんが、魚介やお肉のお料理とも両方にあうオリーブオイルもあります。その探し方については、このあとすぐに
オリーブオイルを料理かける量
オリーブオイルをお料理にかける量ですが、鮮度の良いオリーブオイルでしたら、多少かけ過ぎてもお料理の味を壊すことはありません。例えば、トマトとモッツァレラチーズのサラダ、カプレーゼなどは、お皿に残ったオリーブオイルが1番美味しいのです。
オリーブの果汁のようなオリーブオイルと、トマトの果汁にモッツァレラチーズのミルク。それにフレッシュなバジルやオレガノ。おいしいに決まっていますよね。
これを最後にパンですくっていただくのがカプレーゼの醍醐味なのですが、レストランで、その1番おいしいはずのオリーブオイルを残されてしまう方をよく見ます。でも、そのレストランが使っていたオリーブオイルを味見したら、無理も無いと思ったことがあります。
パスタ料理などの場合オリーブオイルをかける量の目安ですが、お皿に盛りつけた後、お皿の底にオリーブオイルが残っていたら、オリーブオイルをかけ過ぎとイタリアのコック時代に先輩から言われていました。パスタはカプレーゼと違いオリーブオイルを食べる料理ではありませんからね。
あと、エキストラバージンオリーブオイルは、熱で劣化する”言われているから、暖かいお料理にかけても大丈夫?と、ご心配かも知れませんが、パスタの仕上げに使う時は、火を止めてからオリーブオイルをかけていました。そうすれば、火をつけたままでオリーブオイルをかけるより、全然軽く仕上がります。
イタリアのお料理はパスタも含めて、フゥフゥ冷ましながら食べる高温のお料理は少ないです。お肉のグリル料理の仕上げにかけるときは、焼きたてでは無くて、お料理がある程度冷めて、食べ頃になってからオリーブオイルをかけます。
熱々のスープを出したら怒られたことが
私の知る限り、イタリアの人は猫舌です。(笑)
レストランで勤めたばかりの新人時代に、スープを熱々で出したらオーナーに怒られました。「イタリアでは、熱々のお料理は出さない」と言われました。お客様がすぐ召し上がれる温度にするのが基本とのことでした。新人時代には、そのほか、いろいろチョンボをしてしまいました(苦笑)
お料理にかけるオリーブオイル選びで大事なこと
お料理にかけるオリーブオイルですが、大事なのは選び方ですよね。でも、このオリーブオイル選びがなかなか難しい。
わかりやすいオリーブオイル選びの目安として、1.価格、2.味、3.鮮度などの品質。この3点をご案内していきます。
まず価格ですが、イタリア産オリーブオイルの場合、最低でも1リットルあたり定価で3,500円以上、250mlだったら1,300円以上の品をおすすめします。
以下の記事でもご紹介していますが、この価格以下では、イタリアの良いオリーブオイル生産者は生活できないのです。この記事を書いた時はオリーブオイル1リットルで3,000円だったのですが、今は3,500円以上になると思います。また、250mlのサイズはイタリアでは一般的で無く、輸出向け特注品になるので割高で1,300円以上になると思います。
本物のオリーブオイル。1リットル3,000円以下の品をお勧めしない理由
次に味についてですが、お料理にかけるオリーブオイルとして比較的マイルドな魚介類向けのオリーブオイルがおすすめです。魚介類にあうオリーブオイルなら、辛すぎたり苦すぎたりして料理にかけられ無い、パンにつけても食べられないオリーブオイルになる可能性が低いです。先ほどご案内したとおり、産地が海の近くのオリーブオイルは、魚介類のお料理にかけても美味しいマイルドなオリーブオイルです。
最後に鮮度ですが、これが一番大事だと思います。お料理にオリーブオイルをかけるのは健康のためにされている方も多いと思います。でも、オリーブオイルは、熱や光から守ってあげないと、遊離脂肪酸など体に悪い成分が増えてしまうのです。
ただ、この温度などからしっかり管理されているオリーブオイルが非常に少ないです。そこそこ有名なオリーブオイルも、庫内温度が50度以上になってしまうエアコンなしのドライコンテナで運ばれているのを見聞きしていますし、それらがオリーブオイルを多く扱っているお店に並んでいるのも目にします。
多少温度が上がっても食べられますし、一般の方は分からないと思うのですが、やはり後味が油っぽくなり、あのスッと抜けるような爽やかささえ感じるエキストラバージンオリーブオイルの美味しさはありません。
なんだか、とても面倒くさいことを申しております。申し訳ありません。
でも、イタリアの本物のオリーブオイルを知っている者として、ぜひ、美味しい体験をしていただきたいのです。
それに、お子さんやお年寄りなど胃腸の弱い方もお料理にオリーブオイルをかえて召し上がると思います。そのような方々にも、鮮度の良い安心なオリーブオイルをお料理にかけて楽しんでいただきたいと思っています。
ですので、お料理にかけるオリーブオイル選び、この私にお任せいただけませんか
私は小さなイタリア食材のインポーターです。
10年以上営んでいて小さいままなのは、これまでご案内したようなことを流通業界の方にも言ってしまうので煙たがられ、私の品は、なかなか世に出て行かずお客様に届きません。でも致し方無いと思っています。一般には、オリーブオイルはサラダ油などと同じ食物油として販売されているわけですから、オリーブオイルだけ特別な扱いをする事は、難しいことも多いと思います。
でも、やっぱり1番美味しい方法でお届けしたいので、このWEBショップhinatanoを始めました。
レストランなど飲食店の方も、私の品を使いたいと言っていただける方が多いのですが、価格の面でやむを得ず業務用のオリーブオイルを使われています。
今は鎌倉周辺の小さなレストランと、銀座のBVLGARIさんの直営レストランが主な飲食店のお客様です。BVLGARIさんは、私が仕入れているパスタメーカーから紹介されてお取引をはじめさせていただきました。あのパスタもとても良い品です。
あと、お客様としては、食品宅配業界にお世話になっています。そこのお客様にはお年寄りが多いのですが、「おたくのオリーブオイルは、美味しいし、飲んでも軽くて体が楽なので嬉しい」というお声を頂戴して嬉しいです。
下のリンクに、お料理にかけるオリーブオイルとしておすすめしたい品をご案内しております。
このオリーブオイルは、北イタリアの沿岸地域が産地で、魚介類のお料理にあうのですが、高地の畑で採れたせいか味がしっかりしています。
でも、苦かったり辛かったりしない、何にでも合う使い勝手の良いオリーブオイルです。それに、有史以来、これまで一切化学肥料が入っていない有機栽培のオリーブオイルです。栽培開始の200年前から5代に渡って同じ方法で作られたオリーブオイルです。
こちらの画像をクリックしていただくと商品をご覧いただけます。
まとめ オリーブオイルを料理にかける理由と注意点
最後に、本日ご案内した内容をまとめさせていただきます。
1.オリーブオイルをお料理の仕上げに使う際には、辛み苦みが強めの肉料理用のオリーブオイルよりも、魚介類料理にあうといわれているオリーブオイルの方が、大外ししないし、色々な食べ方へ使い回しが利くので便利です。
2.オリーブオイルは、温度管理などが必要な食物油。小売店で温度管理が必要とされていないサラダ油などと一緒に扱われたら傷んでしまいます。オリーブオイルをお求めになる際は、鮮度など品質管理がしっかりしている品をおすすめします。
3.エキストラバージンオリーブオイルは熱に弱いと言われていますが、概ね190℃まで耐えられるので揚げ物にも使えます。
パスタなどの仕上げに使う際には、熱により遊離脂肪酸が増えてしまうことが心配ですが、火を止めてからかければ、火をつけたままかけるより軽く仕上がります。また、お肉のグリルなどにかけるときは、食べ頃の温度に下がった後、オリーブオイルをかけるのをおすすめします。
オリーブオイルをかけることで、お料理がひと味もふた味も美味しくなる経験を!
ぜひお試しください