オリーブオイルが熱によって劣化する 遊離脂肪酸編

オリーブオイルは熱でどう劣化する?

”オリーブオイルは熱に弱いので涼しいところで保管しましょう”
本やテレビで、よく耳にされると思います。

では、熱によって何がどのように劣化するのか、詳しくご案内します。

 

オリーブオイルに熱が加わると遊離脂肪酸が増えます。

オリーブオイルに熱が加わって増える遊離脂肪酸とは、人の体の中で例えると、中性脂肪が分解されて作られて、体を動かすエネルギーになるものです。

使い切れなかった遊離脂肪酸は、肝臓に戻って中性脂肪になります。つまり多すぎると、健康診断で出てくる血中中性脂肪の数値が上がります。味覚としては「油っぽく」感じる成分です。

エクストラバージンオリーブオイルの遊離脂肪酸の国際基準は0.8%です。

下のグラフの一番上の段は、辛み苦みが少ないマイルドなタイプのオリーブオイルが、時間経過と熱で遊離脂肪酸が増える様子を表しているのですが、この場合、37℃の環境下なら、半年くらいでエキストラバージンオリーブオイルの国際基準を超えます。

出典:The Effect of Storage Conditions on Extra Virgin Olive Oil Quality
助成および実施機関:オーストラリア地方産業調査開発公社とオーストラリア・オリーブ協会

「37℃で6ヶ月なら大丈夫。夏は長くても3ヶ月だし」と思われるかも知れませんが、これには輸送に要した時間も含まれます。

ですから、温度管理していないコンテナを使用して船で運んだ場合は、イタリアから日本まで約2ヶ月を要するので、37℃の環境下に置かれていたら日本に着いた段階で、残り4ヶ月以下ということになります。

日本に着いてからも、通関や問屋さんなどを経由してからお店に並ぶので、数値的にかなり厳しいことが考えられます。

 

では、「日本で売られているマイルドなエクストラバージンオリーブオイルは?」と思われるかも知れませんが、日本にはエクストラバージンオリーブオイルの基準が無くて、あるのは「食用オリーブ油」というカテゴリーだけです。

食用オリーブ油の酸度基準は2%以下ですから、例え酸度が0.8%を越えていても法的に問題はありません。

経過した時間の調べ方ですが、イタリア産の場合、オリーブオイルの賞味期限は製造から18ヶ月です。

多くのイタリアのオリーブオイル生産者は、瓶詰め(出荷)から18ヶ月で設定してくるので、残りの賞味期限から逆算すると、そのオリーブオイルが、どの位の時間が経過したか知ることができます。

 

hinatanoのオリーブオイルは、完熟タイプでマイルドなので空輸です。

イタリアから船で運ぶ場合、中東やインド洋など高温地域を通ってくるのですが、船の底の方にコンテナを置いておけばかなり涼しい状態で運べます。しかし、確実では無いですし、鮮度の経過時間が勿体ないので、私は飛行機を使っています。

熱で劣化していないオリーブオイルを選ぶ方法

先ほど”辛み苦みが少ないオリーブオイルなら3ヶ月”とご案内しましたが、この辛み苦みは抗酸化物質のポリフェノールです。これがたっぷり含まれている品なら、温度に対しても強いです。

例えば、辛み苦みが強い、肉料理に合うトスカーナ州のオリーブオイルのような場合は、37℃でも2年くらい遊離脂肪酸の基準値を超えません。でも、味の方はイタリア現地よりも劣ってしまっている可能性は否定できませんが。

 

まとめ オリーブオイルが熱によって劣化する 遊離脂肪酸編

辛み苦みが少ない完熟タイプのオリーブオイルの場合は、温度管理していないコンテナで運ぶと、遊離脂肪酸を超えてしまっている可能性があります。イタリアからの航路で中東やインド洋を通ってきますので、運が悪いと庫内が50℃近くになります。

遊離脂肪酸(中性脂肪)が気になる方は、温度管理されていないオリーブオイルは避けられた方が良いかも知れません。

辛み苦みが強い高ポリフェノールのオリーブオイルの場合は、熱に対する耐性が強く遊離脂肪酸が基準内の可能性が高いですが、味はやはりイタリア現地とは違う場合があると思います。

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ヒナタノ店主・加藤 昭広

おいしいもので喜んでいただくことが大好きです。おいしいものを探してイタリアへ移住。気がついたら仕事になっていました。
自他ともに認めるオリーブオイル ヲタクです。
このブログでは、おいしい話しやイタリアの職人さんたちから聞いた小ネタを紹介しています。