創業から3年くらいで卸のお客様が出来て、お客様の店頭にも毎週末のように立ちました。
よく売れていたのですが、数年経つと何故か段々注文量が減ってきました。
よくある話ですよね。
そこで、
「じゃあ、新商品を探そう」となりました。
既に数種類のオリーブオイルを扱っていましたが、どうしても見つからなかったのがシチリアのオリーブオイル。
濃くて、青い味が印象的な、シチリアのオリーブオイル。
これを探すことにしました。
でも、イタリアのおいしいオリーブオイルは、日本の輸入者が抑えてしまっていることが多いです。
一定の量を買うことを条件に独占契約を結ぶのですが、私は良くないと思います。
生産者は、どれだけ日本で人気が出ても、自分では拡販できない。
契約した日本の会社の都合だけしか売れません。
日本の会社も、約束の量を無理にでも買わなければならないので、売れ残ったらディスカウントストアなどで投げ売りです。
商品価値も品質も下がってしまいますよね。
さて、シチリアのオリーブオイル。
WEBやらイタリアの雑誌やらを片っ端から探しました。
何かひとつ探しものをするときには、ひたすら同じ物だけ見るようにしています。
そうすると、段々要望値が上がっていきます。
しばらくして、「お、これは」という生産者を見つけたので、メアドを探して、早速自己紹介と問合せのメールを送り返事を待つことにしました。
すると、そのちょっと後に電話がかかってきました。
無言電話。
発信元は「表示不可能」とあります。
一度切れて、
再び5分後くらいに電話。
今度は「プロント」(イタリア語の“もしもし“)と出てみますが、切れました。
まぁ、シチリアは疑い深い風土なので、仕方ないですね(笑)
自己紹介のメールには、イタリアから仕入れている生産者名も書いたのですが、そこへも電話したかも知れません。
「名乗らない人から、日本の輸入者で加藤という人物を知っているかと問合せがあったよ」と仕入れ先のおじさんから言われました。
慎重なんですよ。
きっと、いろいろあるのでしょうねぇ(笑)
数日後、すごく丁寧な返信メールが届きました。
なんでも、パルマ(PERMA)で催されるCIBUS(チーブス)に出展するので、よければ、そこでお会いしましょう。とのことでした。
食品博は、あまり好きでは無いのですが、ほかの取引先も何社か出ていて、久しぶりに会いたい人もいたので、パルマに行くことにしました。
業界では世界的に有名な食品博CIBUS(チーブス)が催されるパルマ(PARMA)
パルマの生ハムでも有名なこの街は小さいです。
中央駅にタクシーが10台くらいしかいない、ちっちゃい街で、世界中のバイヤーとイタリア中の食の生産者が参加するイベントを催すので、CIBUS(チーブス)の期間は、もう大変。
色んな事がカオス状態。
何が大変かは、とても長くなるので、また別の機会にご案内させていただきますね。
さて、お祭りのようなCIBUSには、取引先の人も何社か出ていたので、挨拶回りをしました。そのうちの1社のご婦人が
「さっき、あなたのことを知っている?と名乗らない人が来たわよ」
とのこと。
立派だと思いました。
会う前に、ここまで私のことを知ろうという努力をしてくれた方は、いません。
そして、お待ちかねのシチリアの方々とご対面。
そこには社長さんは不在だったのですが、娘さんと、その彼氏NICOLO(ニコロ。営業責任者です)が対応してくれました。
きっと彼が色々調べていたと思うのですが、そこは聞かないのが礼儀。
オリーブオイルは、目的の品のサンプルは終わってしまったけど、農園には数本残っているので、よければ日本へ送ると言われたのですが、味見した瓶詰めが素晴らしかったので、その場でシチリアの農園に行くことにしました。
アンズのような味わいのトマト、プルーンのようなオリーブの瓶詰め。日本ではお目にかかれない美味しさです。
この時は、シチリアへ比較的すんなりたどり着けました。
ネットでの航空券決済中にパソコン固まって空港へ支払いに行ったり、飛行機が2時間遅れるくらいは、イタリア日常生活の一部。
彼らBARBUSCIA(バルブッシャ)の住所は、シチリア島中央部から、やや南東の位置にあるPIAZZA AMERIANA (ピアッツァ・アルメリーナ)です。
オレガノのダンテさんの近くだなと思っていたら、農園自体は、ダンテさんのほぼ隣町でした。縁がある地なのでしょうね。
そして、そのことで瓶詰めのトマトの美味しさに納得しました。
後から聞いた話ですが、トマトは明け方から干し始めます。だんだん気温が上がって、同時に湿度も下がってきますので、お昼前にはちょうどいい感じのセミドライになります。
このトマトのセミドライを作るのは難しく、オーブンを使用している生産者もいます。天日だと乾き過ぎて硬くなっちゃうのですよね。
さて、農園到着
社長さんとご対面。
でも、なんだか怒っているのです。
機嫌が悪いだけかも知れません。
よくわからないのですが。
ずっと
これで分かりました。
社長は、将来NICOLO(ニコロ)の義理のお父さんになるかも知れない人物。
万が一海外との取引で騙されたら、大変なことになってしまうので、念には念を入れたのでしょう
怒れる彼(社長)を置いておいて、NICOLO(ニコロ)に工房やら農園を案内してもらいました。
彼らは、オリーブ農家で無く、野菜農家でした。それも素晴らしい仕事をする人達。
特にアーティーチョークが得意のようです。上の写真はアーティチョーク畑。ぜんぶアーティチョークです。
アーティーチョークは、イタリアでは一般的な野菜で、あのゴツゴツした外側をめくって、内側だけを食べます。日本のタケノコみたいなものです。
彼らは、そのアーティーチョークが、まだ小さいうちに収穫して、さらに柔らかい芯の部分だけにするイタリアでも大変珍しい品も作っていました。
これ、高価だけど滅茶苦茶美味しいです。イタリア人でも食通の人しか知らない珍味です。
まぁ、アーティーチョークは、いいのです。
探しに来たのは、オリーブオイル。
工房内をまわるうちに、怒れる社長さんと再会し、あれこれ教えてもらいました。
どうやら、彼の親の代は、採れた野菜を大きなメーカーに卸しているだけだったのを、彼の代になってから、新しいブランドを立ち上げて、自立しようとされているとのことでした。
一通り見学させてもらったあと、商材の味見。
社長、御自らのプレゼンテーションです。
オリーブオイルは、味見をさせてもらったのですが、味が薄い。。
そう、野菜農家の彼らにとっては、オリーブオイルは、野菜を瓶詰めにする油、材料なのです。
オリーブの実が完熟するまで待って、できるだけ多くのオリーブオイルを採らなきゃならないので、こうなるのです。
「美味いか?」
と聞かれましたが、
「美味しくない」
とは、言えないですよねぇ。
まだ微妙に機嫌が悪そうだし、この薄味のオリーブオイルは、彼らの歴史です。
当たり障りの無い返事をしたら
「そおか!、美味いか!」「そりゃそうだ!」
と吠えられまして
「よーし、もっと、美味いもん食わせてやる」
と言って、奥から持ってきたものを頂戴したら、笑っちゃいました。
美味いんです。ものすごく。
それは、
ピスタチオのクリーム
私、甘いものに興味ないのです。
それでも、美味しかった。
ナッツなのですが、ピーナッツとは全く違う味の濃さ、深さ。
このピスタチオのクリームは、年に1回くらい仕入れています。高価だし、ナッツ系は輸入検査にコストがかかる上に、賞味期限が短いので何度も仕入れる事ができません。
でも、オリーブオイルは、お付き合い程度。
すみません、社長。
そう、先日NICOLO(ニコロ)からあかちゃんが産まれたと連絡がありました。
彼は、無事に婿入りできたようです。
左から、お嬢さん、私、社長の奥様、社長、ニコロ
社長は、この日最高の笑顔で写ってくれました。
ほんと笑わないんです。笑