オリーブオイルの選び方 エクストラバージンオリーブオイル その2

2015_08_11-2

食料品店に行くと実に沢山のオリーブオイルがあります。値段も安価なものから高価なものまで様々。「高いものの方が美味しいだろうと思って買ってみると意外に美味しくない」こんな経験をお持ちの方が沢山いらっしゃると思います。イタリア食材のインポーターの一人として、私だったら日本の小売店でエクストラバージンオリーブオイルをどう選ぶかをご紹介します。ご参考にしていただければ幸いです。
今回は、エクストラバージンオリーブオイルの選び方のつづきです。前回の記事は、こちらをご参照ください。

食用オリーブの実は、イタリアだけでも約200種類
”美味しさ”というのは、個人差があると思います。ですので自分にとって美味しいオリーブオイルは、どういうものかを理解しておく事が、次回選ぶ手助けになります。食用オリーブの実は、瓶詰め用、オリーブオイル用等々を合わせるとイタリアだけでも約200種類にもなります。またオリーブオイルのボトルには品種目が書いていないのが多くあります。そのため一般的には、オリーブの品種を覚えて自分が好きなオリーブオイルを選ぶのは難しいと思います。おおまかな好みの味の傾向を把握しておいて探すのが1番良いと思います。

オリーブの品種についての余談ですが、厳しい環境にも耐えられると言われるオリーブですが意外にデリケートな側面もありまして、品種によっては、ある地方でしか育たないオリーブというのがあります。

また、他の品種が入ってきても、元々生えている地場の品種が攻撃して枯らしてしまう事もあります。例えば、リグーリア州のタジャスカ種オリーブの畑にイタリア全土で見られる品種(レッチーノやフラントイオ)を植えても育たないらしいです。さらに、私の取引先のマリナコロンナ社は、23種類のオリーブを育てているのですが(これ自体非常に珍しい事です)品種の境目にあるオリーブは、毎年数百本弱って枯れてしまうと聞いております。

マリナコロンナ社の農園については、改めて
ものすごい農園です。ご先祖様にローマ法王もいるような名家ですから、驚くような事が多々あります。

種抜きのタジャスカ種のオリーブです。私の取引先は、実の大きさで食用とオリーブオイル用に分けています。これ、美味しいですよ。

種抜きのタジャスカ種のオリーブです。私の取引先は、実の大きさで食用とオリーブオイル用に分けています。これ、美味しいですよ。

産地の食文化を把握して、大まかな味の好みを理解しておく
以前ご紹介しましたとおり、オリーブオイルの味は、産地の食文化(魚介中心か肉類か)と密接に関係しています。例えば、魚介中心のリグーリア州は、タジャスカ種を完熟後に搾油してマイルドなオリーブオイルに仕上げて魚介料理にあうように、肉料理が中心のトスカーナ州は、フラントイオやレッチーノ、モライオロを中心にして、辛みや苦みを出して力強い味にしたりします。

海に近いところで採れたオリーブオイルは、魚介類と相性が良く、山の中は肉料理。
これは、素材の味と味をぶつけて、味を作り出すイタリアの伝統的な料理文化から生じると思われます。

産地の調べ方で1番簡単なのは、グーグルマップでイタリアを開いて、住所を探して入力して生産者を調べる方法です。ラベルのVia(イタリア語で「通り」という意味)で始まる一文が住所です。ラベルに住所がない場合は、社名を検索して所在地を調べます。S.p.A.(株式会社)やS.r.l(有限会社)と書いてある一文の前後にある単語が社名です。

これで、生産者が山の中にあれば肉料理、海の近くだったら魚介類。いささか大雑把ですが大体把握できます。

地名(県名)からも味わいが想像できます。
住所の最後に記されている()内のアルファベット二文字は、県の略称です。ご自分が好きなオリーブオイルのラベルに記載されている県の記号を覚えておけば、同じような味わいを探す手助けにもなります。
例えば、
(IM)リグーリア州インペリア県
(FI)トスカーナ州フィレンツェ県
(CT)シチリア島カターニア県

県単位でしたら、ほぼ同じ食文化(郷土料理)を有しておりますので、それにあったオリーブオイル。つまり同じような味わいのはずです。

Barbusciaのラベル。(CT)とあるのが、シチリア島カターニャ県という意味です。

Barbusciaのラベル。(CT)とあるのが、シチリア島カターニャ県という意味です。

DOPとIGP認証について
さて、時折オリーブオイルのラベルにDOPとかIGPという単語を目にされる事があると思います。
DOPは、「原産地保護呼称(Denominazione di Origine Protetta)」
IGPは、「地域保護表示(Indicazione Geografica Protetta)」

これらは、簡単に申しますと農産物に対して産地や製法から「本物」であることを公的に証明するものです。生ハムやチーズなどにも適用されます。オリーブオイルに関してですが、DOPマークを取得するためには、色や味の検査(それも時折抜き打ち検査)畑の航空写真まで撮って原材料を証明したり審査が非常に厳格です。輸送や保管に間違えがなければ、DOPのオリーブオイルは、美味しいはずです。

しかし、取得するための費用が非常にかかります。前出の費用の他DOPラベルも生産者が購入しなければなりません。そのため中身が同じでもDOPとDOPラベルが無い物は、売価が500円程度以上変わってきます。私の取引先でDOPのオリーブオイルを作っているのは、フラントイオ ヴェンチュリーノ社、マリナコロンナ社、フラントイオ ビアンコ社(カーザブルーナ)、カミリアーノ社ですが、DOP用の専用レシピでオリーブをブレンドしているマリナコロンナ社のDOPモリーゼ以外は、中身がDOPと同じでDOPラベルが無い物を取り扱っております。信頼できる生産者からでしたら、できるだけ安くて美味しい品をお届けしたいからです。

IGPは、一般的にDOPよりも生産地域の範囲が広く設定されていて 「Toscana IGP(トスカーナIGP)」州単位で規定されています。私の知る限りオリーブオイルでIGP設定があるのはトスカーナ州だけだと思います。主観ですが、IGPに関しては、原材料の産地を保証するものであって味のバラツキがかなりあると思います。トスカーナ州は広くて日本の一都三県の1.5倍くらい、関東地方の2/3くらいの面積ですので味に違いが生じるのは致し方無いと思います。

イタリアではトスカーナ州産オリーブオイルというだけで価格が高くなる傾向があるので、DOP設定の無いトスカーナ州産オリーブオイルの偽物防止ために作られたのだと思います。

まとめ。ラベルをよくご覧になってください
先日、小売店でイタリア語ラベルのオリーブオイルを見かけました。その品の日本語の食品表示ラベルを見たら原産国名が書かれていませんでした。つまり一見イタリア産に見えるものの中身は分からない品でした。残念な事ですが似たような事例を時々目にします。

ぜひオリーブオイルをお求めになる際には、ラベルをよくご覧になってください。まず、250ml以上の大きさなら透明ボトルは避けて(※透明ボトルでも空輸かリーファーコンテナで運ばれていて、瓶詰めから二ヶ月以内の賞味期限が16ヶ月以上残っていたら試してみるのも面白いかも知れません。私はこのような品を日本で目にした記憶はありませんが)「賞味期限」「原産国」「輸入者」の日本語表示。次に、ご案内させていただいたようなイタリア語ラベルから読み取れる情報。そうしてお好みの品を探してみてください。

イタリア語の場合、日付は”日 月 年”の順番で表記されている事が多く、写真の場合は、2017年1月10日が賞味期限です。

イタリア語の場合、日付は”日 月 年”の順番で表記されている事が多く、写真の場合は、2017年1月10日が賞味期限です。

私のラベルです。1番新しいヴァッリデッラタジャスカは、再来年が賞味期限です。逆算すると瓶詰めは7月10日頃。良い鮮度のはずです。

私のラベルです。1番新しいヴァッリデッラタジャスカは、再来年が賞味期限です。逆算すると瓶詰めは7月10日頃。良い鮮度のはずです。

株式会社 il Bianco 加藤

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ヒナタノ店主・加藤 昭広

おいしいもので喜んでいただくことが大好きです。おいしいものを探してイタリアへ移住。気がついたら仕事になっていました。
自他ともに認めるオリーブオイル ヲタクです。
このブログでは、おいしい話しやイタリアの職人さんたちから聞いた小ネタを紹介しています。