「パスタなんて、どれを使ってもそんなに変わらない」
そう思われている方にこそ、一度食べていただきたいのが、北イタリア・ドロミテで作られているフェリチェッティ(FELICETTI)のパスタです。
このパスタの一番大きな特徴は、小麦そのものの味が、とても濃いこと。
ソースの味だけではなく、噛んでいるとパスタそのものから小麦の香りや旨み、甘みまで感じられます。
その理由は、使っている小麦と、その小麦の選び方にあります。
MONOGRANO ― ひとつの小麦を味わうためのパスタ
「MONOGRANO(モノグラーノ)」という名前は、
MONO=ひとつ
GRANO=穀物・小麦
という意味です。
一般的なパスタでは、品質や価格を安定させるために、産地や性質の異なる複数の小麦をブレンドすることがあります。
一方、フェリチェッティがMONOGRANOシリーズで目指したのは、ひとつの小麦品種が持っている個性を、そのままパスタにすること。
そのため、原料となる小麦を徹底的に選びました。
私がフェリチェッティ社を訪問した際に聞いた話では、MONOGRANOの開発で重視した条件は、
•小麦をブレンドしないこと
•古くから受け継がれてきた、遺伝的に純粋性の高い品種を選ぶこと
•有機栽培された小麦であること
•そして何より、パスタにしたときに美味しいこと
です。
実は、ここがとても面白いところです。
古い小麦なら、何でもパスタにして美味しいわけではありません。
現在広く栽培されている小麦の多くは、収穫量を増やしたり、倒れにくくしたり、病気に強くしたりするために、長い年月をかけて品種改良されてきました。
それに対してMONOGRANOでは、そうした大量生産向けの小麦とは異なる、古くから受け継がれてきた小麦にも目を向けました。
ところが、古い品種なら何でも美味しいパスタになるわけではありません。
小麦によっては、パスタにするとボソボソした食感になったり、弾力が出なかったり、茹でている途中で折れてしまうこともあります。
つまり、
「希少な小麦を探す」だけではなく、
「希少で、なおかつパスタにしたときに美味しい小麦を探す」
必要があったのです。
フェリチェッティ社では、そのために世界中から小麦を探し、MONOGRANOシリーズ全体で数百ものサンプルを試したと聞いています。
スペルト系の小麦だけでも約260種類
たとえば、イタリア語で「Farro」と呼ばれる古代小麦。
ヒナタノがフェリチェッティ社を訪問したときに聞いた話では、Farroだけでも約260種類もの候補があったそうです。
「スペルト小麦」と一言で呼んでしまうと一種類の小麦のように思えますが、実際には非常に多くの系統が存在します。
その中から、
「有機栽培できる」
だけではなく、
「パスタにしたときに美味しい」
「しっかりとした食感が出る」
「小麦そのものの香りが良い」
という条件を満たすものを探していったのです。
現在フェリチェッティがMONOGRANOのFarroに使用しているのは、ウンブリアで栽培される有機のFarro Dicocco(ファッロ・ディコッコ)。古代から地中海周辺で食べられてきた小麦の系統です。
フェリチェッティ社自身も、この小麦の味わいを非常に細かく表現していて、ナッツやパンの皮を思わせるような香ばしさを特徴として挙げています。
パスタなのに、ワインやオリーブオイルのように「品種による味の違い」を楽しめる。
これこそMONOGRANOの面白さです。
KAMUT®も、約40もの候補から
さらに面白いのが、カムット小麦です。
フェリチェッティ社を訪問した際には、比較的系統の少ないKamutでも、約40種類の候補を比較したと聞きました。
ちなみに「KAMUT®」は小麦の品種そのものの一般名称ではなく、古代小麦の一種であるKhorasan(ホラサン)小麦のブランド名です。
現在フェリチェッティが使用しているKAMUT®ブランドのホラサン小麦は、カナダのサスカチュワン州で栽培されています。
フェリチェッティ社は、この小麦について、
白い花や殻をむいたばかりのナッツを思わせる香り、そして松の実やマカダミアナッツのような風味がある、
と表現しています。
かなり細かな表現ですが、実際に普通のデュラム小麦のパスタと食べ比べると、確かに味の方向が違います。
色も少し濃く、噛んだときには独特の深い味と、ほんのりとした甘みを感じます。
パスタ工房は、標高約1,000mのドロミテにあります。
フェリチェッティ社があるのは、北イタリア・トレンティーノ地方のPredazzo(プレダッツォ)。
ドロミテの山々に囲まれた、標高約1,000mの町です。
創業は1908年。
今から100年以上前。標高約1,000mのPredazzoでは、冬になると深い雪によって麓との行き来が難しくなりました。そこで重要だったのが、長期間保存できる乾燥パスタです。
1908年、創業者のValentino Felicettiが買い取ったのは、木工所、マッチ工場、そして小さなパスタ工場が一緒になった施設でした。豊富な山の水を動力として利用し、木工所から出るおがくずもパスタを乾燥させるための熱源として活用しました。
現在、世界の一流シェフが使うFelicettiのパスタ。その始まりには、「雪に閉ざされる山の村で、冬を越すための食べ物を作る」という、とても生活に根ざした理由があったのです。
地域への貢献が創業の動機でした。
フェリチェッティが自社のパスタを説明するとき、小麦と一緒に必ず登場するものがあります。
それが、
「水」と「空気」
です。
使用するのはアルプスの山から得られる水。
そして、高地の澄んだ空気の中でパスタを乾燥させます。
「小麦・水・空気」。
フェリチェッティは、この三つをパスタを作る原材料のように考えています。
材料の少ない食品だからこそ、ひとつひとつの違いが味にそのまま現れる。
とてもシンプルな考え方です。
ブロンズダイスと、緻密なパスタ作り
もうひとつ、フェリチェッティの特徴が製造精度の高さです。
パスタは、練った生地を「ダイス」と呼ばれる型の穴から押し出して作ります。
フェリチェッティではブロンズ製の型を使い、パスタの表面に細かな凹凸を作ります。
表面が完全につるつるではないため、ソースがパスタにしっかり絡みます。
これをやっているパスタメーカーは、そこまで珍しく無いのですが、フェリチェッティ社の場合は、その先に凄さがありました。
フェリチェッティの工場を訪問して驚いたのが、その仕事の細かさ。
型を使い続ければ穴は少しずつ摩耗していきますから、同じ商品でも管理が甘ければ太さに違いが出ます。
フェリチェッティでは、こうした部分まで非常に細かく管理しています。
ペンネなら、表面の溝の深さまで管理するほど。
確か、誤差の基準は0.3mm~0.5mm以内だと記憶しています。
この緻密さが、彼らの凄いところです。
彼らと20年近く仕事をしているのですが、緻密さと正確さに敬服しています。
イタリアって、いろんな事が、もっと緩いと思ってらっしゃる人もいるかも知れません。
でも、イタリアって、思っていた以上に広く、地域によって全然違うのですよね。
美味しく茹でるための、ちょっとしたコツ
せっかくのパスタですので、ぜひ茹で方にも少しこだわってみてください。
1.塩は、お湯の1〜1.2%くらい
水1リットルなら、塩10〜12g程度が目安です。
思っているより、少し多く感じるかもしれません。
でも、ソースを後から濃くするのではなく、パスタそのものに美味しい塩味を付けると、料理全体の味がまとまりやすくなります。
2.できれば、深さのある鍋で
パスタを茹でるときには、できるだけ縦長で深さのある鍋をおすすめしています。
中火以上を保ち、鍋の中にしっかり縦の対流を作ります。
この縦の対流で塩味を乗せるのが、とても大事になります。
パスタを人の手で何度も動かすのではなく、お湯の流れに任せて茹でていくイメージです。
3.最初からずっと混ぜ続けません
ヒナタノでは、
茹で始めて約3分後に、1分ほどパスタをほぐすように混ぜ、その後はできるだけ触らない
という茹で方をおすすめしています。
鍋の中でパスタを泳がせておくことで、表面に少しずつ層のように塩味が付き、小麦の風味を残したまま茹で上げることができます。
何度も激しく混ぜ続けると、この美味しい塩味が剥がれ落ちちゃうんです。
4.まずは表示時間まで茹でてみてください
日本では「表示時間より1〜2分早く上げる」という話をよく聞きます。
もちろん最後にフライパンで長く加熱する料理なら、それもひとつの方法です。
ただ、フェリチェッティは茹で上がりの食感まで考えて作られています。
最初にお召し上がりになるときには、ぜひ、パッケージに書かれている時間まできちんと茹でてみてください。
中心に芯を残すだけではない、弾力のあるアルデンテを楽しめます。

それぞれのパスタの特徴
■ 有機栽培セモリナ粉のスパゲッティ 1.7mm
もっとも標準的な太さのスパゲッティです。
太すぎず細すぎず、オイル系、魚介、トマトソースなど、非常に幅広い料理に使えます。
フェリチェッティの特徴である小麦の味も分かりやすく、初めてお試しになる方にもおすすめです。
ペペロンチーノのようなシンプルな料理にすると、パスタそのものの違いが特によく分かります。
「ソースが美味しい」のではなく、パスタそのものが料理の味を作っていることに気付いていただけると思います。
一方、カルボナーラやアマトリチャーナのように味の濃いソースの場合は、もうひとサイズ太い2.3mmのスパゲットーニがおすすめです。
■ 有機栽培セモリナ粉のスパゲットーニ 2.3mm
標準的な1.7mmのスパゲッティに対して、2.3mm。約1.3倍の太さがあります。
数字で見るとわずかな違いに思えますが、食べるとまったく別のパスタです。
噛んだときの弾力が強く、小麦の味もよりはっきり感じられます。
カルボナーラ、アマトリチャーナ、濃いトマトソースなどには特におすすめ。
オイル系で使う場合には、ツナ、ベーコン、アンチョビなど、少し旨みの強い具材を合わせると太い麺とのバランスが良くなります。
小麦そのものの質、練り方、乾燥の仕方。
パスタメーカーの実力が分かりやすいのは、むしろ太麺です。
フェリチェッティを初めて召し上がる方にも、一度は試していただきたいパスタです。
■ 黒のパスタ イカ墨入りスパゲッティ 1.7mm
こちらはMONOGRANOとは別の、フェリチェッティの「Speciale」シリーズ。
イカ墨をパスタの生地そのものに練り込んでいます。
※オーガニック認証は取れていません。イカのオーガニックって証明出来ないですものね。。
太さは標準的な1.7mm。
黒い色だけが特徴ではありません。
麺自体にイカ墨のコクがありますので、魚介類を使ったときに料理全体の味が一段深くなります。
特におすすめしたいのがボンゴレです。
普通のスパゲッティで作ったボンゴレとは、かなり印象が変わります。
アサリの旨みにイカ墨のコクが重なって、シンプルなのに非常に奥行きのある味になります。
最後に粗く切ったミニトマトを散らしてください。
トマトの酸味と甘みが加わり、見た目にも黒・赤・緑のコントラストが生まれます。
ご家庭のボンゴレが、かなりお店らしい一皿になります。
■ 有機栽培Farroのスパゲッティ 1.7mm
古くから地中海周辺で栽培されてきたFarroを使ったパスタです。
日本では「スペルト小麦」と呼ばれることも多い古代小麦の仲間ですが、フェリチェッティが現在MONOGRANOに使用しているのは、ウンブリア産の有機Farro Dicoccoです。
そして、このパスタについてぜひ知っていただきたいのが、先ほどの**「約260種類」**という話。
一口にFarroと言っても、非常に多くの系統があります。
その中から、フェリチェッティがパスタに適したものを探して選びました。
食べたときにまず感じるのは、もちもちとした独特の食感。
そして普通のデュラム小麦よりも、穀物らしい香ばしさがはっきりしています。
少し全粒粉にも似ていますが、単に香ばしいだけではなく、噛んでいるうちに奥から味が出てきます。
特におすすめなのが魚介類。
ボンゴレやペスカトーレにすると、魚介から出た旨みとFarroの穀物らしい香りが重なります。
普通のパスタでは作ることのできない味になる。
魚介類のパスタがお好きな方には、ぜひ一度試していただきたいパスタです。
■ 有機栽培 カムット(KAMUT®ホラサン)小麦のスパゲッティ 1.7mm
古代小麦「Khorasan(ホラサン)」を使用したパスタです。
KAMUT®は、このホラサン小麦を厳しい基準のもとで栽培・管理したブランド名。
数千年前から中東で栽培されてきた、現代のデュラム小麦の祖先に近い小麦とされています。
フェリチェッティが使用しているKAMUT®ホラサン小麦は、カナダ・サスカチュワン州産。
そしてフェリチェッティ社を訪問した際には、開発時に約40もの候補を比較したと聞きました。
特徴は、まず色。
普通のデュラム小麦のパスタより、少し濃い黄金色をしています。
そして味にも独特の深さがあります。
普通の小麦より、わずかに甘みを感じるほど。
フェリチェッティ自身は、この小麦の香りを白い花やナッツ、味わいを松の実やマカダミアナッツにたとえています。
茹で上げると表面がわずかになめらかな質感になり、ソースとの絡みも非常に良好です。
トマトソースでも、オイル系でも使えますが、最初はあまり材料を増やさず、良いオリーブオイルと少量のチーズ程度のシンプルな料理で召し上がってみてください。
「小麦を変えるだけで、パスタはこんなに味が変わるのか」
ということを、一番分かりやすく感じていただけるパスタのひとつです。
世界の一流料理人にも選ばれてきたパスタ
フェリチェッティのパスタは、イタリアをはじめ世界の一流料理人にも使われてきました。
•Massimo Bottura Osteria Francescana
•Carlo Cracco Ristorante Cracco
•Norbert Niederkofler St. Hubertus
•Davide Scabin Combal.Zero
•Andrea Berton Ristorante Berton
など、ミシュランガイドで星を獲得したシェフやレストランにも採用されてきました。
でも、このパスタの面白さは「高級レストランが使っていること」だけではありません。
一番面白いのは、ご家庭でいつものパスタを作ったときです。
いつものトマトソース。
いつものボンゴレ。
いつものペペロンチーノ。
それなのに、
「あれ? いつもと味が違う」
となる。
ソースを変えたわけではありません。
変えたのはパスタだけ。
小麦にも品種があり、産地があり、それぞれ味が違う。
ワインの葡萄や、オリーブオイルのオリーブ品種と同じです。
ぜひ、ソースだけではなく、**「今日は、どの小麦のパスタを食べよう」**という楽しみ方をしてみてください。
小麦の味がするパスタ。FELICETTI。
お召し上がり方など、ご不明な事は、以下まで何なりとお問い合わせください。
オリーブオイル専門店「hinatano-ヒナタノ」
店主 加藤 昭広
〒248-0006鎌倉市小町1-14-15
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