オリーブオイルの本物と偽物を見分ける価格とその理由

オリーブオイルの価格は偽物か本物かの目安になる?

偽物が多いと言われているエキストラバージンオリーブオイル(オリーブオイルとさせていただきます)本物のオリーブオイルは、どう探せば良いのか分からなくなりますよね。

実は、偽物オリーブオイルの話は、かなり昔からありました。

ですので、オリーブオイルの仕入れ先を決めるとき、私は、作り手のお人柄や農園、工房の様子を直接見て決めるようにしています。

そして、そのような、まじめな本物のオリーブオイル生産者も、偽物オリーブオイルの被害者です。

その彼らが加入しているオリーブ生産組合から聞いた”本物のオリーブオイルの価格”についてご紹介します。本物と偽物オリーブオイルを見分けるポイントにもなります。

本物のオリーブオイルであるための価格の整合性

まじめなイタリアの本物のオリーブオイル生産者が被害にあっているのは価格です。

安価な産地名が偽物のオリーブオイルが、イタリア産として売られていて、価格競争力に劣る本物のオリーブオイルを作る小さな生産者は苦労されています。

イタリアのオリーブ生産組合の人から、何年も前に聞いた話ですが、イタリア産の場合、卸値で1リットル6ユーロ以下オリーブオイルは、エキストラバージンオリーブオイルの国際基準(酸度0.8%)を満たす本物のオリーブオイルではあり得ないと言っていました。

「本物のイタリア産オリーブオイルなら、1リットル6ユーロ以上になるはずだ」と。この6ユーロという価格を下回るとオリーブオイルの農家や生産者が生活できないそうなのです。

オリーブオイルの価格は、色んな理由で決まってきます。それでも、この1リットル6ユーロというのは、話を聞いた2010年頃でも、かなり安価な量産品の価格です。

加えて、近年イタリアでは不作が続いていますので、現在はもっと高価なはずです。私の場合は、2010年頃に比べて、仕入れ価格は平均4割ほど値上がりしています。

オリーブオイルの価格の決まり方については、こちらでご案内しております。

なぜオリーブオイルの価格帯は幅が広いのか

オリーブオイルの販売価格を試算してみましょう。為替レートを1ユーロ130円で計算してみます。

オリーブオイルの卸値が1リットル6ユーロとすると、オリーブオイル代は780円になります。

これに瓶やラベル、キャップに注ぎ口の費用が発生します。この費用を仮に200円にしてみましょう。200円は少々高いように思えるかも知れませんが、ボトルは光を透さない遮光ボトルで想定しています。遮光ボトルは高価なのです。

オリーブオイルは光に極めて弱い食品なので、ちゃんとした生産者は遮光ボトルを使用しています。

オリーブオイルと光の関係については、以下の記事に詳しくご案内しています。

光がオリーブオイルを酸化、劣化させる理由

オリーブオイルと容器代、合計980円で本物の1リットル入りイタリア産オリーブオイルの完成です。これがオリーブオイル工場からの出し値です。

ここから、工場から港や空港までのイタリア国内の運賃、そこから日本までの運賃が、かかります。

イタリア国内の運賃は、業者によって差がありますので、仮にボトル1本あたり20円とします。イタリアの港や空港に着いた時点で、本物の1リットル入りイタリア産オリーブオイルは、1,000円です。

イタリアから日本への運賃は、一番安い方法(エアコン無しのドライコンテナ)で運ぶと25トンで20~25万円(船賃、船から港の倉庫への積み下ろし代含む)くらいです。

1リットルのオリーブオイルの重量は瓶込みで概ね1.5kgです。

25トンコンテナ(25,000kg)には、単純計算で16,000本積める計算になります。25万円を16,000本で割ると16円になりますので、イタリアから日本への船賃は16円ですが、計算が簡単なので20円とさせてください。

イタリアからの運賃が安くて驚かれたと思います。船賃は、私が使っている航空便の20分の1です。海運は、ちゃんと使えば大事な物流方法ですね。

日本の通関前の倉庫に入った段階で、本物の1リットル入りイタリア産オリーブオイルは1,020円になっています。

これに関税(オリーブオイルは、フレーバー付きなどを除き原則無税)、消費税、地方消費税がかかります。

これらの税金は、送料と商品代を足した金額に対してかかりますので、運賃が高い場合は、税金も高くなります。

加えて通関や検疫所の届出費用などがありますが、消費税だけでも100円かかりますので、諸々含めて180円とします。税関を通った段階で、本物の1リットル入りイタリア産オリーブオイルは1,200円になりました。

 

ここから、問屋さん(一次問屋、二次問屋と、お店まで複数の問屋さんを通ることもあります)の利益や、国内各地への運賃等々を計算すると、小売店に着いた段階で、本物の1リットル入りイタリア産オリーブオイルは、最低でも2,000円になっているはずです。そうなるとお店での販売価格は、3,000円以上になります。

※2020年12月6日加筆:消費税率など修正させていただきました。またイタリアでのオリーブオイルの相場が上がっていますので、文中では3,000円とさせていただいておりますが、現在は3,500円以上になると思います。

※2023年3月13日加筆:ウクライナでの戦争による物流費高騰や、欧州でのインフレなど国際情勢の影響で、現在は4,000円以上になると思います。

3,000円でも、品質的に本物のオリーブオイルか微妙な理由

この3,000円のイタリア産オリーブオイルですが、実は、品質的に本物のエキストラバージンオリーブオイルの状態で店頭に並んでいるかは微妙です。

なぜなら、日本への輸送には、エアコン無しのドライコンテナの使用を仮定しました。オリーブオイルの輸送にはエアコン無しのドライコンテナが、未だ主流だからです。エアコン無しでは、コンテナ内が高温になります。高温になると様々な物質がエキストラバージンオリーブオイルの基準を越えてしまいます。

上の図は、オリーブオイルに熱が加わると、どのように変化するかを表しています。

サンプルに使用しているオリーブオイルは、一番デリケートなタイプなのですが、37℃のところに置いておくと、大体半年くらいでエキストラバージンオリーブオイルの国際基準酸度0.8%を上回ってしまいます。

イタリアから日本までは、高温の中東やインド洋を通って、東南アジアでの乗り継ぎ含めると、順調に来ても45日かかります。

日本に着いてからも、店頭に並ぶまでに時間がかかりますし、コンテナ内の温度は、37℃より高くなることがあります。

下の東京都健康安全研究センター広域監視部のレポートでは、輸送中のコンテナ内の気温は、50℃以上になるという報告も出ています。

東京都健康安全研究センター広域監視部 輸入食品の運送状況等実態調査報告

こちらは、オリーブオイルに熱が加わると、どうなるかを詳しくご案内した記事です。

オリーブオイルが熱によって劣化する 遊離脂肪酸編
オリーブオイルが熱によって劣化する ピロフェオフィチンa編

本物か偽物オリーブオイルか見分ける目安3,000円を下回る方策

イタリア産の場合、オリーブオイル生産に関わる人達が生活できる価格水準。つまり本物のエキストラバージンオリーブオイルである価格は、どれだけ安くても販売価格は1リットル3,000円になる内訳をご案内しました。この価格を下回る方法で考えられるのは

1.売れ残った在庫のエキストラバージンオリーブオイルを使用する。
実は、低い温度でちゃんと保管しておけば、搾油後数年は、エキストラバージンオリーブオイルの基準を満たしている場合があります。この在庫品のオリーブオイルは、本物のエキストラバージンオリーブオイルと言えると思います。

 

2.美味しいオリーブオイルだけど、酸度(酸価)などエキストラバージンオリーブオイル国際基準を下回っている品を使う。
オリーブの実は、収穫後時間が経ってから搾油したり、オリーブの実が熟しすぎていると、エキストラバージンオリーブオイルの基準を下回ってしまうことがあります。

味はそこそこでも、本物のエキストラバージンオリーブオイルとは言えないと思います。

それでも、日本にはエキストラバージンオリーブオイルの法的な基準が無いので、多少酸度(酸価)が上回っていても法的には問題無いかも知れませんが、私は違うと思います。

 

3.スペイン産やギリシャ産、アフリカ産などの安いオリーブオイルを混ぜる
このあたりが考えられます。

本物だけど産地偽造のオリーブオイルが混ざる事情と見分け方

本物のオリーブオイルとは言えども、外国産の産地偽物のオリーブオイルが、イタリアで混ざることが多くなったのは比較的最近の話です。

オリーブオイルは、生使いに耐えられる品質が標準のイタリア産は、やはり国際的に評価が高いので、安価な国のオリーブオイルをイタリア産として売りたい。しかし、昔はヨーロッパ域内でも国境や税関があったので、難しかったようです

でもヨーロッパは90年代前半に単一市場として統合されました。そのためUE域内の物や人の移動に関しては税関なども無くなりました。

つまり、同じ域内のギリシャやトルコ、スペインのオリーブオイルがイタリアに入ってきてイタリア産として売るのが非常に簡単になってしまいました。

同時にEU域内での物の移動が、よく分からなくなってしまったようです。そのため貿易統計などには、つじつまが合わない数字になっていて、イタリア国内で生産されたオリーブオイルの量より遙かに多い、イタリア産オリーブオイルが存在してしまっております。

この産地偽装のオリーブオイルは、イタリア産とよく似た品種を使っていて、ちゃんと作られたオリーブオイルなら、味わいが似ていて本物か偽物オリーブオイルかを見分けるのが極めて難しくなります。ただし素性が怪しいオリーブオイルに違いは無いので、安い価格で取引されています。

高価と言われている小豆島産ですが、その昔はもっと高価だったらしいです。

値段のことと言えば小豆島産のエキストラバージンオリーブオイルを私は思い起こします。
250mlで3,000円以上の品が多くて高価に思えるかも知れませんが、気候がオリーブの原産地域と大きく違い、栽培が大変だったりしますので小豆島産の場合は致し方無いようです。

それに実は、昔小豆島産のオリーブオイルは、一升瓶1本で10万円くらいしていたそうです。

恐らく30年以上前のことだと思いますので、10万円の価値も今より高価です。250mlで3,000円の場合、一升瓶10万円の頃から比べると、価格が五分の一に下がっていますから、かなりの努力をされたのではと思います。

オリーブオイルの価格は、高くても本物の確証は無いとは言われますが、、、

主に輸入品のオリーブオイルについて言われていることだと思うのですが、”エキストラバージンオリーブオイルの価格が、高価だから本物とは限らない”という話も聞かれた事がありますか?

確かに高価なオリーブオイルは必ず本物とは言えませんが、高価な価格帯は、仕入れる輸入業者からすると慎重になる品です。高価で偽物オリーブオイルだったら大損害を被りますので、慎重に見分けます。

でも問題は、そのオリーブオイルの輸入者に見分けるスキルがあるかどうかです。もし、気になる高価なエキストラバージンオリーブオイルがあるのでしたら、すぐには買わず、そのオリーブオイル輸入業者の実績を見てみてください。しっかりとした取引実績などがあり、オリーブオイルの目利きが信用できそうでしたら、試す価値はあるかと思います。

高価な品は、ちゃんと温度などから管理されていれば、きっと美味しいエキストラバージンオリーブオイルだと思います。

本物のオリーブオイル。
1リットル3,000円以下の品をお勧めしない理由のまとめ

オリーブ生産組合から聞いた話から試算すると1リットル3,000円以上が本物と言われる目安になります。

3,000円を下回る方策はいくつかあります。そのうち前シーズンの売れ残り(在庫品)は保管状態が良ければ本物のオリーブオイルです。産地偽装のオリーブオイルに関しては、製造や保管が良ければ本物のオリーブオイルですし、十分美味しいです。でも同時に見分けるのが難しくなります。

高価なオリーブオイルでも、本物と安心できないと言われますが、高価なオリーブオイルは、輸入業者からするとリスクのあるオリーブオイルです。実績がちゃんとしている輸入業者の品なら、試してみる価値はあると思います。

もし、本当に偽物オリーブオイルが多いとすれば、日本で出回る大きな原因は、エキストラバージンオリーブオイルの基準が、日本には無いことだと思います。

同じように、海外と名前は同じだけど物の食品という例は、オリーブオイル以外にもあります。

例えば、生ハム。生ハムとして売られているの品のうち、豚肉の薄切りに水飴がコーティングされている品があるのをご存じですか?本来、生ハムは、豚のもも肉と塩だけを原材料にして、時間をかけて熟成させて作られたものです。

ぜひ、本物のオリーブオイルを召し上がってみてください。最近、このサイトの「ブルーナさんのオリーブオイルは、なんだか暖かい」と言っていただけました。本物は心がこもっております。

hinatano

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ヒナタノ店主・加藤 昭広

おいしいもので喜んでいただくことが大好きです。おいしいものを探してイタリアへ移住。気がついたら仕事になっていました。
自他ともに認めるオリーブオイル ヲタクです。
このブログでは、おいしい話しやイタリアの職人さんたちから聞いた小ネタを紹介しています。